今回は、サービス残業の残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。
第3 判断
1 時間外等の割増賃金(残業代)請求について
(1)原告A,原告B及び原告C(フロント業務)について
ア 前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
(ア)原告A,原告B及び原告Cは,フロント業務を担当しており,3日に1日,13時(以下,時刻については,24時間制で表記する。)から翌日の13時までの勤務となっていた(前提事実(3)ア参照)。
(イ)担当業務の内容等
本件ホテルのフロントは,対面式のものではなく,利用客は,部屋の使用状況や料金を表示してある料金パネルで,空室の中から利用したい部屋を選ぶことによってチェックインを行うことができ,また,各部屋に備付けられた自動精算機に表示された金額を投入してチェックアウトを行うことができる。このように,利用客は,チェックイン及びチェックアウトのいずれの場合にも,フロントを訪れる必要はなく,フロントの担当者は,通常,直接利用客に対応することはない。フロントの担当者が顧客に直接対応するのは,顧客がクレジットカードを使用する場合や,空席状況を確認したりする場合などに限られる(証人J,原告A)。
これらの原告らが担当していたフロント業務の主たる内容は,〔1〕本件ホテルの利用客が駐車場に入ってきた時点から部屋に入るまでを,モニターで監視すること(料金パネルで利用客が複数の部屋を押すと,入室しなかった部屋についても利用がされていることとなり,売上げが計上されてしまうシステムになっていたため,そのような事態を防止する必要があった。),〔2〕フロントにかかる内線電話(利用者からの各種のクレームや食事の注文など)及び外線電話への対応,〔3〕駐車場のモニターの監視(本件ホテルの利用客以外の者が駐車場を利用することを防止するとともに,何者かに利用客の自動車のナンバーが撮影されてプライバシーが害されることを防止するため)などであった(〈証拠略〉,原告A)。
(ウ)業務の開始時刻及び終了時刻
これらの原告らのタイムカードに記載された出勤時刻を総じて見ると,13時よりも20分ないし30分程度早めの時刻となっている日が多い(別紙労働時間計算表1ないし3参照)。
そして,これらの原告らは,勤務日には13時よりも20分から30分程度前に来るように指示されていた。そして,この20分ないし30分の間を使って,前任者との間での引継ぎ(フロントで保管している現金及び商品の引継ぎ)を行うとともに,前任者が日報作成を行う間のフロント業務(電話対応など)を行っていた(以上について,〈証拠略〉,原告A)。
なお,業務の終了時刻については,後任者も同様に20分ないし30分程度前に来るように指示されていたことからすると,業務終了前にタイムカードを打刻していたことや,日報を作成するのにコンピューターのデータが円滑に表示されないために時間を要したことがあったこと(原告A)を考慮しても,終業予定時刻(13時)を15分程度を超える業務の延長を要したと認めるに足りる証拠はない。
(エ)休憩
これらの原告らについては,被告の就業規則においては,次の時間帯(合計6時間40分)が休憩及び仮眠時間と定められていた(〈証拠略〉)。
a 17時から19時まで
b 24時から翌日1時まで
c 3時から6時40分まで
しかしながら,これらの原告らは,前記(イ)記載の〔1〕ないし〔3〕の業務をこれらの時間帯においても行っており,これらの業務を離れて自由に過ごせる時間が確保されていなかった。食事についても,フロント業務を行っていた席においてとり,食事中にもこれらの業務を担当していた(以上について,〈証拠略〉,証人J,原告A)。
イ 前記アで認定したところによれば,これらの原告らは,12時30分(タイムカードの出勤時刻の打刻がそれよりも遅いときは,タイムカードの打刻時刻とする。)に業務を開始し,13時15分(タイムカードの退出時刻の打刻がそれよりも早いときは,タイムカードの打刻時刻とする。)に業務を終了していたと認めるのが相当である。そして,これらの原告らは,前記ア(エ)記載のとおり定められていた休憩及び仮眠時間においても,業務に従事していたと認められる(いわゆる手待時間であると認められる。)。そうすると,これらの原告らが実際に労働したと認められる時間は,別紙労働時間計算表(認定)1ないし3〈略〉記載の「出社時刻」から「退社時刻」までの間であったこととなる。なお,原告Aが平成14年10月20日に午前8時35分に出勤していることが認められるところ(〈証拠略〉),これは,業務の必要から通常とは異なる時間に出勤することが命じられたことによるものと認めるのが自然であり,同日については原告Aは同時刻から業務を行っていたと認められる。
他方,証拠(〈証拠略〉)によれば,これらの原告らの各月の所定労働時間は,別紙計算表(認定)1ないし3の「所定労働時間」の欄に記載の時間数を超えないことが認められる。
(2)原告D(フロント業務・一般事務)について
ア 前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
(ア)原告Dは,平成15年5月末日までは17時から翌日の1時までの間,また,同年6月1日からは16時から24時までの間の勤務とされており(前提事実(3)イ参照),週に1日の休日があった(原告D)。
原告Dについては,就業規則等において休憩時間が定められていなかった(〈証拠略〉,証人J)。
(イ)担当業務の内容等
原告Dの担当した主たる業務は,利用客が注文した料理を調理することであり,その他には,料理に関する在庫等の帳簿の作成やフロント業務があった(〈証拠略〉,原告D)。
原告Dについて,被告は,勤務時間内に1時間分の休憩時間があるものとして扱っていた(〈証拠略〉,証人J)。また,利用客からの料理の注文が深夜になってもあり,原告Dは,これに対応して調理を行っていた(原告D)。
イ 前記アで認定したところによれば,原告Dは,タイムカードに打刻された出勤時刻から退出時刻までの間業務に従事しており,休憩時間が全く確保されていなかったと認められる。そうすると,原告Dが実際に労働したと認められる時間は,別紙労働時間計算表(認定)4〈略〉記載の「出社時刻」から「退社時刻」までの間であったこととなる。もっとも,証拠(〈証拠略〉)によれば,原告Dが,原告A,原告B及び原告Cと同様の勤務態勢で勤務していたと認められる日(別紙労働時間計算表(認定)4の「退社時刻」欄に網掛けの表示を行った日である。)については,前記(1)イに記載したのと同様の理由から,業務の終了時刻を37時15分と認めるのが相当である
また,前記アで認定したところによれば,原告Dの所定労働時間は,1日につき7時間であったと認められる。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇、保険会社との交通事故の示談交渉、刑事事件や多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
2009年5月4日月曜日
残業代請求
今回は、サービス残業の残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。
(5)被告の主張について
ア 被告の主張イ(時間外労働(残業)についての事前の承認の必要性)について
被告は,被告においては,実際に労働実態もないのに時間外手当(残業代)が請求されることを防止するため,事前に所属長の承認を得て就労した場合の就業のみを時間外勤務として認めることとしており、原告ら主張の時間外労働(残業)については所属長の承認がされていない旨主張する。
なるほど,被告の就業規則には被告主張のような内容の規定が存在するが(前提事実(4)ク),被告が主張するように,この規定は不当な時間外手当(残業代)の支払がされないようにするための工夫を定めたものにすぎず,業務命令に基づいて実際に時間外労働(残業)がされたことが認められる場合であっても事前の承認が行われていないときには時間外手当(残業代)の請求権が失われる旨を意味する規定であるとは解されない。
そして,前記(1)ないし(4)において認定したところを総合すると,これら原告らの時間外労働(残業)は被告による業務命令に基づくものと認めるのが相当である。
そうすると,この被告の主張を認めることはできない。
イ 被告の主張ウ及びエ(職務手当等)について
被告は,原告ら各自に対して毎月3万円の職務手当を支払っており,職務手当は時間外労働(残業)及び深夜労働(残業)の対価としての性格を有するから,その割増賃金(残業代)額が月額3万円を超えない限り,改めて被告が割増賃金(残業代)の支払義務を負うことはないことや,本件ホテルにおいては,被告の給与規定はフロント内書棚等に備え置かれており周知されていたことを主張する。
なるほど,被告の給与規定には前提事実(4)エ記載のような定めがある。
しかし,〔1〕原告らの業務内容や勤務時間がそれぞれ異なるにもかかわらず,被告は,原告に対して一律に毎月3万円の職務手当を支給していること,〔2〕被告においては,従来から,時間外手当(残業代)の金額が職務手当の金額の範囲内に止まる場合であっても,時間外手当(残業代)が支給されてきており,前記の被告の給与規定の定め(前提事実(4)エ)の趣旨どおりに運用されていなかったこと(〈証拠略〉,弁論の全趣旨),〔3〕この被告の給与規定の定め(前提事実(4)エ)の趣旨が本件ホテルにおいて周知されていなかったこと(証人J)からすると,職務手当が時間外労働(残業)及び深夜労働(残業)の対価としての性格を有すると認めることはできない。
そうすると,この被告の主張を認めることはできない。そして,この職務手当も,通常の労働時間又は労働日の賃金(労働基準法37条1項)として,割増賃金(残業代)の基礎となる賃金に含めるべきである。
なお,被告は,皆勤手当は,無欠勤にて1か月就業した場合に支給されるものであるから(前提事実(4)オ参照),割増賃金(残業代)の基礎となる額に含めるべきではない旨主張する。しかし,皆勤手当も通常の労働時間又は労働日の賃金であるから,割増賃金(残業代)の基礎となる賃金に含められるべきであると解される。
(6)以上によれば,原告らの割増賃金(残業代)額は,別紙計算表(認定)1ないし8及び別紙労働時間計算表(認定)1ないし8のとおり計算されることになり,その金額は,次のとおりである。
ア 原告A 220万5147円
イ 原告B 241万8078円
ウ 原告C 251万5919円
エ 原告D 256万3186円
原告Dが被告から時間外手当(残業代)として1万5172円を受領したことについては争いがないので,未払の割増賃金(残業代)の額は254万8014円となる。
オ 原告E 90万4378円
原告Eが被告から時間外手当(残業代)として1192円を受領したことについては争いがないので,未払の割増賃金(残業代)の額は90万3186円となる。
カ 原告F 115万1297円
原告Fが被告から時間外手当(残業代)として4770円を受領したことについては争いがないので,未払の割増賃金(残業代)の額は114万6527円となる。
キ 原告G 122万7352円
原告Gが被告から時間外手当(残業代)として2万2657円を受領したことについては争いがないので,未払の割増賃金(残業代)の額は120万4695円となる。
ク 原告H 113万8534円
原告Hが被告から時間外手当(残業代)として11万1145円を受領したことについては争いがないので,未払の割増賃金(残業代)の額は102万7389円となる。
2 付加金の請求について
原告らはいずれも未払の割増賃金(残業代)の半額に相当する額の付加金を請求していることから,前記1(6)記載の各原告らの割増賃金(残業代)についての認容額の半額を付加金として認めるのが相当である。
そうすると,原告らに認めるべき付加金の額は,次のとおりとなる。
ア 原告A 110万2574円
イ 原告B 120万9039円
ウ 原告C 125万7960円
エ 原告D 127万4007円
オ 原告E 45万1593円
カ 原告F 57万3264円
キ 原告G 60万2348円
ク 原告H 51万3695円
3 原告Hの不法行為に基づく損害賠償請求について
(1)証拠(〈証拠略〉,証人J,証人I,原告H,原告A,原告F,原告D)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 原告Hは,平成15年12月ころ,パートタイマーでないと今後は雇用を継続しないと被告から言われていたために,いろいろと悩んだ末,平成16年3月15日で退職する予定であった。
イ 原告らは,平成16年2月27日ころ,被告に対して割増賃金(残業代)を請求する趣旨の通知書を送付した。
ウ 平成16年3月11日,被告のマネージャーであったIが,本件ホテルを訪れ,フロント内にいた原告Hに対して,「えらいことやってくれたな。」,「会社をやめてからするもんやろう。」,「会社に世話になったんやろう。」,「こんなやつよう雇ったなあ。」,「まだおんのか。」,「この百姓が。」と,きつい口調で罵った。
また,その際,Iは,同フロントの付近で,本件ホテルの支配人であるJ(以下「J」という。)に対して,「あんなやつら,早く辞めてもらったらどうや。あんたの采配で2日分ぐらいの給料は何とかなるやろう。給料全部出してやって,あしたから来てもらうな。」と述べた。その言葉は,原告Hに十分に聞こえた。
この言葉を聞いて,原告Hは,Jに翌日から出勤しない旨を告げて,翌日以降は出勤しなくなった。
(2)前記(1)で認定したところによれば,原告Hが前記(1)ウ記載のIの行為によって精神的苦痛を受けたこと,また,このIの行為が被告の事業の執行について行われたことが認められる。
そして,原告Hが既に被告を近いうちに退職することを決めていたことなど,本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると,このIの行為に対する慰謝料としては,10万円の金員の支払を命じるのが相当であると認められる。
企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士の費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉、解雇、刑事事件や借金の返済、敷金返却や原状回復(事務所、オフィス、店舗)、遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
(5)被告の主張について
ア 被告の主張イ(時間外労働(残業)についての事前の承認の必要性)について
被告は,被告においては,実際に労働実態もないのに時間外手当(残業代)が請求されることを防止するため,事前に所属長の承認を得て就労した場合の就業のみを時間外勤務として認めることとしており、原告ら主張の時間外労働(残業)については所属長の承認がされていない旨主張する。
なるほど,被告の就業規則には被告主張のような内容の規定が存在するが(前提事実(4)ク),被告が主張するように,この規定は不当な時間外手当(残業代)の支払がされないようにするための工夫を定めたものにすぎず,業務命令に基づいて実際に時間外労働(残業)がされたことが認められる場合であっても事前の承認が行われていないときには時間外手当(残業代)の請求権が失われる旨を意味する規定であるとは解されない。
そして,前記(1)ないし(4)において認定したところを総合すると,これら原告らの時間外労働(残業)は被告による業務命令に基づくものと認めるのが相当である。
そうすると,この被告の主張を認めることはできない。
イ 被告の主張ウ及びエ(職務手当等)について
被告は,原告ら各自に対して毎月3万円の職務手当を支払っており,職務手当は時間外労働(残業)及び深夜労働(残業)の対価としての性格を有するから,その割増賃金(残業代)額が月額3万円を超えない限り,改めて被告が割増賃金(残業代)の支払義務を負うことはないことや,本件ホテルにおいては,被告の給与規定はフロント内書棚等に備え置かれており周知されていたことを主張する。
なるほど,被告の給与規定には前提事実(4)エ記載のような定めがある。
しかし,〔1〕原告らの業務内容や勤務時間がそれぞれ異なるにもかかわらず,被告は,原告に対して一律に毎月3万円の職務手当を支給していること,〔2〕被告においては,従来から,時間外手当(残業代)の金額が職務手当の金額の範囲内に止まる場合であっても,時間外手当(残業代)が支給されてきており,前記の被告の給与規定の定め(前提事実(4)エ)の趣旨どおりに運用されていなかったこと(〈証拠略〉,弁論の全趣旨),〔3〕この被告の給与規定の定め(前提事実(4)エ)の趣旨が本件ホテルにおいて周知されていなかったこと(証人J)からすると,職務手当が時間外労働(残業)及び深夜労働(残業)の対価としての性格を有すると認めることはできない。
そうすると,この被告の主張を認めることはできない。そして,この職務手当も,通常の労働時間又は労働日の賃金(労働基準法37条1項)として,割増賃金(残業代)の基礎となる賃金に含めるべきである。
なお,被告は,皆勤手当は,無欠勤にて1か月就業した場合に支給されるものであるから(前提事実(4)オ参照),割増賃金(残業代)の基礎となる額に含めるべきではない旨主張する。しかし,皆勤手当も通常の労働時間又は労働日の賃金であるから,割増賃金(残業代)の基礎となる賃金に含められるべきであると解される。
(6)以上によれば,原告らの割増賃金(残業代)額は,別紙計算表(認定)1ないし8及び別紙労働時間計算表(認定)1ないし8のとおり計算されることになり,その金額は,次のとおりである。
ア 原告A 220万5147円
イ 原告B 241万8078円
ウ 原告C 251万5919円
エ 原告D 256万3186円
原告Dが被告から時間外手当(残業代)として1万5172円を受領したことについては争いがないので,未払の割増賃金(残業代)の額は254万8014円となる。
オ 原告E 90万4378円
原告Eが被告から時間外手当(残業代)として1192円を受領したことについては争いがないので,未払の割増賃金(残業代)の額は90万3186円となる。
カ 原告F 115万1297円
原告Fが被告から時間外手当(残業代)として4770円を受領したことについては争いがないので,未払の割増賃金(残業代)の額は114万6527円となる。
キ 原告G 122万7352円
原告Gが被告から時間外手当(残業代)として2万2657円を受領したことについては争いがないので,未払の割増賃金(残業代)の額は120万4695円となる。
ク 原告H 113万8534円
原告Hが被告から時間外手当(残業代)として11万1145円を受領したことについては争いがないので,未払の割増賃金(残業代)の額は102万7389円となる。
2 付加金の請求について
原告らはいずれも未払の割増賃金(残業代)の半額に相当する額の付加金を請求していることから,前記1(6)記載の各原告らの割増賃金(残業代)についての認容額の半額を付加金として認めるのが相当である。
そうすると,原告らに認めるべき付加金の額は,次のとおりとなる。
ア 原告A 110万2574円
イ 原告B 120万9039円
ウ 原告C 125万7960円
エ 原告D 127万4007円
オ 原告E 45万1593円
カ 原告F 57万3264円
キ 原告G 60万2348円
ク 原告H 51万3695円
3 原告Hの不法行為に基づく損害賠償請求について
(1)証拠(〈証拠略〉,証人J,証人I,原告H,原告A,原告F,原告D)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 原告Hは,平成15年12月ころ,パートタイマーでないと今後は雇用を継続しないと被告から言われていたために,いろいろと悩んだ末,平成16年3月15日で退職する予定であった。
イ 原告らは,平成16年2月27日ころ,被告に対して割増賃金(残業代)を請求する趣旨の通知書を送付した。
ウ 平成16年3月11日,被告のマネージャーであったIが,本件ホテルを訪れ,フロント内にいた原告Hに対して,「えらいことやってくれたな。」,「会社をやめてからするもんやろう。」,「会社に世話になったんやろう。」,「こんなやつよう雇ったなあ。」,「まだおんのか。」,「この百姓が。」と,きつい口調で罵った。
また,その際,Iは,同フロントの付近で,本件ホテルの支配人であるJ(以下「J」という。)に対して,「あんなやつら,早く辞めてもらったらどうや。あんたの采配で2日分ぐらいの給料は何とかなるやろう。給料全部出してやって,あしたから来てもらうな。」と述べた。その言葉は,原告Hに十分に聞こえた。
この言葉を聞いて,原告Hは,Jに翌日から出勤しない旨を告げて,翌日以降は出勤しなくなった。
(2)前記(1)で認定したところによれば,原告Hが前記(1)ウ記載のIの行為によって精神的苦痛を受けたこと,また,このIの行為が被告の事業の執行について行われたことが認められる。
そして,原告Hが既に被告を近いうちに退職することを決めていたことなど,本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると,このIの行為に対する慰謝料としては,10万円の金員の支払を命じるのが相当であると認められる。
企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士の費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉、解雇、刑事事件や借金の返済、敷金返却や原状回復(事務所、オフィス、店舗)、遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
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