今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。
(3)原告E,原告F及び原告G(ルームメイク業務)について
ア 前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば次の各事実が認められる。
(ア)これらの原告らは,平成15年4月26日までは9時から17時までの間,同月27日からは8時から16時までの間の勤務とされており(前提事実(3)ウ),週に1日の休日があった(〈証拠略〉)。
また,これらの原告らの休憩時間は,就業規則において,〔1〕12時から13時まで及び〔2〕15時から15時20分まで(合計1時間20分)と定められていた(〈証拠略〉)。
(イ)担当業務の内容等
本件ホテルには,2階ないし5階に9室ずつ,6階に3室,合計39室の客室があり,昼間のルームメイク業務は,2人が1つのペアとなり,2階ないし5階を1つずつのペアが担当し,6階については各ペアが適宜分担していた。
客室の清掃作業としては,〔1〕毎日朝から,各室のチェックアウトがされた後に行われる「本掃」,〔2〕1か月に1度,各室を徹底的に清掃する「特掃」の他に,〔3〕休憩の利用客が客室を出た後の「メイク」の作業があった。なお,風呂場については,これらの原告らではなく,男性の担当者が作業をしていた。
「本掃」は9時から行われていたが,これらの原告らは,「本掃」が始まる前に,客室用のビールや歯ブラシなどの物品を地下からリネン室に運ぶなどして,清掃作業の準備を行っていた。また,「本掃」の作業は,15時ころまではかかっていた。
これらの原告らは,「本掃」の作業を行っていないときには,各階にあるリネン室で食器を洗うなどして,「メイク」の作業に入るために待機していた。すなわち,リネン室には,休憩客が客室を出たことを示すランプが設置してあり,そのランプの点灯や,フロントからの電話連絡により,「メイク」の作業に入ることが指示されていた。
これらの原告らは,1階の食堂で昼食をとっており,フロントの担当者から昼食をとりやすい時間帯について連絡を受けて,昼食をとっていた。これらの原告らは,昼食を約15分間でとっていた。また,原告Gは,メイクリーダーなって以降,まず他のルームメイク担当者が昼食をとれるように心がけた結果,自身の食事の時間の確保が困難となっていた。(以上について,〈証拠略〉,原告F)
イ 前記アで認定したところによれば,これらの原告らは,タイムカードに打刻された出勤時刻から退出時刻までの間業務に従事していたと認められ,また,休憩時間については,〔1〕原告Gについては,メイクリーダーとなって以降は,休憩時間が全く確保されていなかったが,メイクリーダーとなる以前には,15分間の休憩時間が確保されていたと認められ,〔2〕原告E及び原告Fについても,15分間の休憩時間が確保されていたと認められるものの,それ以上に休憩時間が確保されていなかったことが認められる(15分を超える部分については,いわゆる手待時間であると認められる。)
そうすると,これらの原告らが実際に労働したと認められる時間は,別紙労働時間計算表(認定)5ないし7〈略〉記載の「出社時刻」から「退社時刻」までの間であり,同表の「休憩時間」記載のとおりの休憩がとられていたこととなる。
また,前記アで認定したところによれば,これらの原告らの所定労働時間は,1日につき6時間40分であったと認められる。
(4)原告H(フロント業務・一般事務・リーダー業務)について
ア 前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
(ア)原告Hは,9時から17時までの勤務とされており(前提事実(3)エ),週に1日の休日があった(〈証拠略〉)。
原告Hについては,就業規則等において休憩時間が定められていなかった(〈証拠略〉,証人J)。しかし,後記(イ)記載のとおり,原告H自身が勤務報告書や残業報告書の作成をしていたことからすると,原告H自身,12時から13時までのころに1時間の休憩時間が用意されていることを理解していたとみるのが自然である。
(イ)担当業務の内容等
原告Hは,本件ホテルのフロントにおいて,金銭出納帳や仕入帳の記帳,請求書の処理,勤務報告書や残業報告書の作成,各室の精算機からの集金業務,客室のチェック,支配人が休みの際の支配人代行,他の同種のホテル(ライバル店)の調査などを担当していた(〈証拠略〉,証人J,原告H)。
原告Hについて,被告は,勤務時間内に1時間分の休憩時間があるものとして扱っていたが,原告Hの休憩時間は,昼食時間が確保されていたにすぎなかった(〈証拠略〉,証人J,原告H)。
イ 前記アで認定したところによれば,原告Hは,タイムカードに打刻された出勤時刻から退出時刻までの間業務に従事しており,休憩時間は昼食時間の15分程度しか確保されていなかったと認めるのが相当である。そうすると,原告Hが実際に労働したと認められる時間は,別紙労働時間計算表(認定)8〈略〉記載の「出社時刻」から「退社時刻」までの間であり,同表の「休憩時間」記載のとおりの休憩がとられていたこととなる。
また,前記アで認定したところによれば,原告Hの所定労働時間は,1日につき7時間であったと認められる。
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