2010年1月2日土曜日

顧問弁護士(法律顧問)によくある質問・・・従業員の私生活上の非行

このブログでは、企業の顧問弁護士をしている者の立場から、日々接している法律問題のうち、一般的な情報として役に立ちそうなものをメモしています。ジャンルは幅広く扱っていますが、近時、残業代が支払われない問題などの労務問題が増えているので、そのような傾向を反映した形でのテーマのバラつきはあるかもしれません。

今回のテーマは、従業員の私生活上の非行です。

労働者の私生活上の行為について、就業規則の懲戒事由(「犯罪に該当する行為」、「会社の名誉・信用を著しく毀損する行為」など)に該当するとして、労働者を懲戒処分に処することがありますが、そもそも私生活上の行為についてまで、使用者は支配・干渉し、それを理由として懲戒処分に処することができるのでしょうか。

この点について、横浜ゴム事件(従業員が、住居侵入罪で罰金2500円に処せられたのに対し、会社が懲戒解雇事由である「不正不義の行為を犯し、会社の体面を著しく汚した者」に該当するとして、この従業員を懲戒解雇した事案)において、最高裁は、以下のように判断しました。

原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)によれば、上告会社は、被上告人が上告会社の従業員賞罰規則一六条八号にいう「不正不義の行為を犯し、会社の体面を著しく汚した者」に該当することを理由として、同人を懲戒解雇にしたというのである。そこで、原審が認定した事実関係のもとにおいて、被上告人が右懲戒解雇の事由に該当するかどうかについて按ずるに、被上告人がその責任を問われた事由は、被上告人が昭和四〇年八月一日午後一一時二〇分頃他人の居宅に故なく入り込み、これがため住居侵入罪として処罰されるにいたつたことにあるが、右犯行の時刻その他原判示の態様によれば、それは、恥ずべき性質の事柄であつて、当時上告会社において、企業運営の刷新を図るため、従業員に対し、職場諸規則の厳守、信賞必罰の趣旨を強調していた際であるにもかかわらず、かような犯行が行なわれ、被上告人の逮捕の事実が数日を出ないうちに噂となつて広まつたことをあわせ考えると、上告会社が、被上告人の責任を軽視することができないとして懲戒解雇の措置に出たことに、無理からぬ点がないではない。しかし、翻つて、右賞罰規則の規定の趣旨とするところに照らして考えるに、問題となる被上告人の右行為は、会社の組織、業務等に関係のないいわば私生活の範囲内で行なわれたものであること、被上告人の受けた刑罰が罰金二、五〇〇円の程度に止まつたこと、上告会社における被上告人の職務上の地位も蒸熱作業担当の工員ということで指導的なものでないことなど原判示の諸事情を勘案すれば、被上告人の右行為が、上告会社の体面を著しく汚したとまで評価するのは、当たらないというのほかはない。


なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。また、最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。

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