2011年2月3日木曜日

顧問弁護士のかかわりうる判例

今回は、顧問弁護士の業務(企業法務)に関わる判例を紹介します。 

1 本件は,新築建物を購入した被上告人らが,当該建物には構造耐力上の安全性を欠くなどの瑕疵があると主張して,その設計,工事の施工等を行った上告人らに対し,不法行為に基づく損害賠償等を求める事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1)上告人Yは,上告人Yとの12間で,鉄骨造スレート葺3階建ての居宅である第1審判決別紙物件目録記載2の建物(以下「本件建物」という。)の建築を目的とする請負契約を締結した。その工事の施工は上告人Y2が,その設計及び工事監理は上告人Y3及び上告人Y4が行い,本件建物は平成15年5月14日までに完成した。
(2)被上告人らは,平成15年3月28日,上告人Y1から,代金3700万円で,持分を各2分の1として本件建物及びその敷地を購入した。被上告人らは,同年5月31日,本件建物の引渡しを受け,以後これに居住している。
(3)本件建物には,柱はり接合部に溶接未施工の箇所や,突合せ溶接(完全溶込み溶接)をすべきであるのに隅肉溶接ないし部分溶込み溶接になっている箇所があるほか,次のような構造耐力上の安全性にかかわる重大な瑕疵があるため,これを建て替えざるを得ない。
ア 1階及び2階の柱の部材が小さすぎるため,いずれも柱はり耐力比が制限値を満たしていない上,1階の柱については応力度が許容応力度を超えている。
イ 2階の大ばりの部材が小さすぎるため,応力度が許容応力度を超えている。
ウ 2階及び3階の大ばりの高力ボルトの継ぎ手の強度が不足している。
エ 外壁下地に,本来風圧を受けない間仕切り壁の下地に使用される軽量鉄骨材が使用されているため,暴風時などに風圧を受けると,大きなたわみを生じ,外壁自体が崩壊するおそれがある。
オ 基礎のマットスラブの厚さが不足しており,その過半で応力度が許容応力度を超えている。
3 原審は,上告人らの不法行為責任を肯定した上,本件建物の建て替えに要する費用相当額の賠償責任を認めるなどして,被上告人らの請求を各1564万4715円及び遅延損害金の支払を求める限度で認容すべきものとした。
4 所論は、被上告人らがこれまで本件建物に居住していたという利益や,被上告人らが本件建物を建て替えて耐用年数の伸長した新築建物を取得するという利益は,損益相殺の対象として,建て替えに要する費用相当額の損害額から控除すべきであるというのである。 
5(1)売買の目的物である新築建物に重大な瑕疵がありこれを建て替えざるを得ない場合において,当該瑕疵が構造耐力上の安全性にかかわるものであるため建物が倒壊する具体的なおそれがあるなど,社会通念上,建物自体が社会経済的な価値を有しないと評価すべきものであるときには,上記建物の買主がこれに居住していたという利益については,当該買主からの工事施工者等に対する建て替え費用相当額の損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として損害額から控除することはできないと解するのが相当である。
 前記事実関係によれば,本件建物には,2(3)のような構造耐力上の安全性にかかわる重大な瑕疵があるというのであるから,これが倒壊する具体的なおそれがあるというべきであって,社会通念上,本件建物は社会経済的な価値を有しないと評価すべきものであることは明らかである。そうすると,被上告人らがこれまで本件建物に居住していたという利益については,損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として損害額から控除することはできない。
(2)また,被上告人らが,社会経済的な価値を有しない本件建物を建て替えることによって,当初から瑕疵のない建物の引渡しを受けていた場合に比べて結果的に耐用年数の伸長した新築建物を取得することになったとしても,これを利益とみることはできず,そのことを理由に損益相殺ないし損益相殺的な調整をすべきものと解することはできない。
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