2009年1月21日水曜日

残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

第2 事案の概要
 本件は,被告の従業員であった原告らが,割増賃金(残業代)の支払(いずれの原告についても,平成14年3月支給分から平成16年3月支給分までのもの)を求めた事案である。
1 前提事実(証拠を掲記した事実を除くほかは,当事者間に争いがないか,争うことが明らかにされていない事実である。)
(1)被告
 被告は,ファッションホテル(ラブホテル)である「ユーズT」(以下「本件ホテル」という。)を経営する株式会社である。
 本件ホテルには,客室が39室ある(〈証拠略〉)。
(2)原告ら
 原告らは,いずれも被告の従業員であり,本件ホテルにおいて業務に従事していた者である。
 各原告の担当していた業務内容,入社時期,退職時期は,次のとおりである。
ア 原告A フロント業務担当
平成11年4月9日入社 平成16年3月15日退職
イ 原告B フロント業務担当
平成11年4月12日入社 平成16年3月15日退職
ウ 原告C フロント業務担当
平成13年6月26日入社 平成16年3月15日退職
エ 原告D フロント業務・一般事務担当
平成13年6月25日入社 平成16年3月15日退職
オ 原告E ルームメイク業務担当
平成8年11月16日入社 平成16年3月15日退職
カ 原告F ルームメイク業務担当
平成6年8月7日入社 平成16年3月15日退職
キ 原告G ルームメイク業務担当(なお,原告Gは,平成15年9月16日以降,メイクリーダーであった。)
平成13年11月26日入社 平成16年3月15日退職
ク 原告H フロント業務・一般事務・リーダー業務担当(なお,原告Hがリーダーとなったのは,平成15年5月16日以降である。)
平成11年12月13日入社 平成16年3月15日退職
(3)原告らの勤務態勢
 原告らの勤務態勢は,次のとおりであった。
ア 原告A,原告B及び原告C(フロント業務)
 3日に1日,13時(午後1時)から翌日の13時(午後1時)までの勤務となっていた。
イ 原告D(フロント業務・一般事務)
(ア)平成15年5月まで
17時(午後5時)から翌日の1時(午前1時)まで
(イ)平成15年6月から
16時(午後4時)から24時(午後12時)まで
ウ 原告E,原告F及び原告G(ルームメイク業務)
(ア)平成15年4月26日まで
9時(午前9時)から17時(午後5時)まで
(イ)平成15年4月27日まで
8時(午前8時)から16時(午後4時)まで
(以上について,〈証拠略〉,原告F,弁論の全趣旨)
エ 原告H(フロント業務・一般事務・リーダー業務)
9時(午前9時)から17時(午後5時)まで
(4)被告の給与規定の内容
 被告の給与規定(平成13年4月1日から実施されたもの)や就業規則(同日から実施され,平成14年3月30日に改定されたもの)には,次の旨の定めがある(〈証拠略〉)

ア 時間外勤務手当(残業代)(給与規定16条)
 時間外勤務手当(残業代)は,正規の就業時間を超えて勤務することを命じられ,その勤務に服した一般職に支給する。
 時間外勤務手当(残業代)の額は,その勤務時間につき,勤務1時間当たりの算定基礎額に100分の125を乗じた額とする。
イ 休日勤務手当(給与規定17条)
 休日勤務手当は,休日に勤務することを命じられ,その勤務に服した従業員に支給する。ただし,振替休日を与えられた場合は,当該休日勤務は,通常の勤務日に勤務したものとみなし,休日勤務手当は支給しない。
 休日勤務手当の額は,勤務1時間当たりの算定基礎額に対して,法定休日については100分の135,その他の休日については100分の125を乗じた額とする。
ウ 深夜勤務手当(残業代)(給与規定18条)
 深夜勤務手当(残業代)の額は,午後10時から午前5時までの間に勤務した従業員に支給する。深夜勤務手当(残業代)の額は,その勤務時間につき,勤務1時間当たりの算定基礎額に100分の25を乗じた額とする。
エ 職務手当(給与規定20条)
 職務手当は,一般職に従事する従業員に支給する。
 職務手当の額は,時間外及び深夜勤務等の特殊性を考慮して別に定める。
 職務手当の支給を受ける者には,特に指定した場合を除き,時間外及び深夜勤務手当(残業代)は支給しない。ただし,時間外及び深夜勤務手当(残業代)額が職務手当額を超える場合には,別途超過額を職務手当の追加分として支給する。
オ 皆勤手当(給与規定21条)
 皆勤手当は,無欠勤にて1か月就業した場合に支給する。
カ 計算期間など(給与規定7条)
 従業員に毎月支払う給与は,前月16日から当月15日までを計算期間として当月の末日に支払う。ただし,支給日が休日に当たるときは,その前営業日に繰り上げて支給する。
 時間外手当(残業代),休日勤務手当及び労働基準法11条並びに91条に規定する賃金の減額については,前月16日から当月15日までを一給与計算期間とし,当月15日をもって締め切る。
キ 変形労働時間制(就業規則12条)
 業務の都合により,1か月単位の変形労働時間制による勤務を実施することがある。(なお,平成14年3月30日改定前の就業規則においては,「業務の都合により,変形労働時間制による勤務を実施することがある。」と定められていた。〈証拠略〉,原告A)

ク 時間外勤務(就業規則15条2項)
 従業員が時間外勤務を行う場合には,原則として所属長に事前の承認を得なければならない。
(5)原告らのタイムカード
 原告らが打刻していたタイムカードにおける出勤時刻及び退出時刻は,別紙労働時間計算表1ないし8〈略〉の「出社時刻」及び「退社時刻」欄記載の時刻のとおりである。
(6)原告らの各月の給与額(基本給や各種手当の額)は,別紙計算表1ないし8〈略〉に記載のとおりであった。
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