2009年3月21日土曜日

残業代請求

今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。

3 被告の主張
(1)時間外等の割増賃金(残業代)請求について
ア 原告らの業務内容,休憩等について
(ア)原告A,原告B及び原告C(フロント業務)
a 本件ホテルのフロントは,対面式のものではない。顧客は,部屋の使用状況や料金を表示してある料金パネルで,空室の中から利用したい部屋を選ぶことによってチェックインを行うことができ,また,各部屋に備付けられた自動精算機に表示された金額を投入してチェックアウトを行うことができる。このように,顧客は,チェックイン及びチェックアウトのいずれの場合にも,フロントを訪れる必要はなく,フロントは,通常,直接に顧客対応をすることはない。フロントが顧客に直接対応するのは,顧客がクレジットカードを使用する場合や,空席状況を確認したりする場合などに限られる。
 本件ホテルのフロント業務の主たるものは,フロントに備え付けてある電話の対応(外部からの電話やチェックインした顧客からの電話への対応)をすることである。顧客からの電話の内容の大半は,食事の注文か,設備に不備のあった場合である。午前2時から午前6時までの深夜は,このような電話はほとんどなく,実質的にはフロント業務はほとんどないと言える。
 なお,フロント業務としては,13時(午後1時)の交替時に,現金や業務の引継ぎ,顧客の入退出の記録などのルーティーンワークも挙げられる。
 以上のように,本件ホテルのフロント業務は通常1人で担当が可能であり,原告A,原告B及び原告Cの3人が3日に1日の順で担当していた。また,フロント業務は24時間に及ぶため,休憩時間の交代要員として原告Dと原告Hが配置されていた。
b 原告A,原告B及び原告Cの労働時間は,3日に1日,13時(午後1時)から翌日の13時までとなっていた(1か月単位の変形労働時間制)。
 また,被告においては,次の合計6時間40分が休憩及び仮眠時間とされており,これらの時間帯は自由に過ごして良い時間として実質的に確保されていたのであり,これらの原告らは十分に休憩等をとっていた。
(a)17時から19時まで
(b)24時から翌日1時まで
(c)3時から6時40分まで
 さらには,これらの原告らの担当業務の内容を見ても,特に所定労働時間を超えて従業する必要はなく,タイムカードの打刻時刻をもって労働時間を認めることは相当でない。

(イ)原告D(フロント業務・一般事務)
a フロント業務の内容は,前記(ア)a記載のとおりである。
 一般事務とは,帳簿類の記帳や,月末の備品類の在庫の確認・注文などである。また,原告Dは,時間が空いている場合には,ルームメイクを手伝ったり,料理等を行うこともあった。
 原告Dは,フロント業務担当の原告A,原告B及び原告Cが休憩・仮眠をとりやすくするための交代要員として雇用された。
b 原告Dについても,休憩時間が1時間確保されており,十分に休憩がとれていた。
 また,原告Dの担当業務の内容を見ても,特に所定労働時間を超えて従業する必要はなく,タイムカードの打刻時刻をもって労働時間を認めることは相当でない。
c 被告は,原告Dに対して,職務手当(後記ウ参照)とは別に,次のとおり,時間外手当(残業代)を支払った。
平成15年1月 1万1379円 (9時間分)
同年8月 3793円 (3時間分)
(ウ)原告E,原告F及び原告G(ルームメイク業務)
a ルームメイク業務とは,顧客が部屋を去った後の清掃業務で,ベッドメイク,備品の補充,部屋の清掃,トイレ・洗面所の清掃などを行う業務である。
 被告は,ルームメイク業務の担当者に対して,清掃状況を見ながら各自の判断で適宜休憩を取るように指示しており,また,従業員休憩室を設け,テレビを設置するなどして,従業員が休憩しやすい環境を整備している。
 なお,原告Gは,メイクリーダーとなって以降は,他のルームメイク担当者が清掃した部屋の点検業務,備品の注文,ルームメイク担当者のシフト調整を担当するようになり,実際のルームメイク業務を担当してはいない。
b 原告E,原告F及び原告Gについては,〔1〕正午から13時(午後1時)まで,及び〔2〕15時(午後3時)から15時20分までの間が休憩時間とされており(合計1時間20分),十分に休憩がとれていた。
 また,これらの原告らの担当業務の内容を見ても,特に所定労働時間を超えて従業する必要はなく,タイムカードの打刻時刻をもって労働時間を認めることは相当でない。
c 被告は,これらの原告らに対して,職務手当(後記ウ参照)とは別に,次のとおり,時間外手当(残業代)を支払った。
(a)原告E
平成15年3月 4770円 (4時間分)
同年11月 1192円 (1時間分)
(b)原告F
平成15年3月 5962円 (5時間分)
同年4月 4770円 (4時間分)
(c)原告G
平成15年3月 1万0732円 (9時間分)
同年4月 2万0273円 (17時間分)
同年5月 1192円 (1時間分)
同年9月 1192円 (1時間分)
(エ)原告H(フロント業務・一般事務・リーダー業務)
a フロント業務及び一般業務の内容は,前記(ア)a又は(イ)a記載のとおりである。なお,原告Hは,リーダーの肩書きを有していたが,支配人代行のような業務を行っていたわけではない。
b 原告Hについては,正午から13時(午後1時)までの間が休憩時間とされており,その業務内容から,直接顧客に接する機会は少なく,自分のペースで労働することが可能であり,十分に休憩がとれていた。
 また,原告Hの担当業務の内容を見ても,特に所定労働時間を超えて従業する必要はなく,タイムカードの打刻時刻をもって労働時間を認めることは相当でない。
c 被告は,原告Hに対して,職務手当(後記ウ参照)とは別に,次のとおり,時間外手当(残業代)を支払った。
平成15年2月 2385円 (2時間分)
同年3月 3万1005円 (26時間分)
同年4月 3万2794円 (27.5時間分)
同年5月 2万1465円 (18時間分)
同年6月 1万0441円 (8.5時間分)
同年7月 1万2284円 (10時間分)
同年8月 1万1670円 (9.5時間分)
同年9月 6124円 (5時間分)
同年10月 4913円 (4時間分)
同年11月 9051円 (7時間分)
(合計 14万2150円)
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