2009年11月14日土曜日

顧問弁護士(法律顧問)がよく受ける質問:裁判員

顧問弁護士(法律顧問)としてよく質問を受けるテーマをまとめていきます。

まずは、裁判員制度が開始したことに関して、従業員が裁判員となる場合に備えて、企業として注意すべき点についてです。

裁判員候補者は、まったくのランダムで選ばれますので、いつ貴社の従業員が選ばれるかわかりません。

貴社の従業員が裁判員(候補者)となって裁判所に呼び出される場合に、会社が負う法律上の義務は以下の2つに限定されていますから、これら以外に関する具体的な対応は企業ごとのルールを決めて差し支えありません。

①その従業員の欠勤を認めなければならない

②裁判員(候補者)となったことによって解雇等の不利益な取扱をしてはならない

※ ここにいう不利益な取扱には、解雇、退職強要、降格処分、減給処分などが含まれます。なお、ここにいう減給処分には、裁判員活動により出勤できなかった日を欠勤扱いとして無給とすることは含まれません。欠勤中の有給が保障されているわけではないからです。



従業員が裁判員に選ばれた場合、その従業員は数日間にわたって欠勤せざるを得なくなります。したがって、会社としては、呼び出しがあったらその事実を事前に把握する必要がありますが、会社には、従業員が裁判員候補者として呼び出された事実は知らされないため、その従業員に自発的に報告してもらうしかありません。そこで、社内ルールとして、そのような自発的に報告すべき義務を従業員に課すべきですし、その義務を社内規程に明記しておくことが望ましいです。その際、欠勤中の給与の支給の有無等についても具体的に定めておくべきでしょう。

なお、社内の重要人物が裁判員に選ばれた場合には、数日間欠勤しただけでも、企業活動に重大な支障が生じることがあります。会社として、その従業員について辞退を認めてもらいたい場合には、会社側で具体的な職務内容や欠勤により企業がいかに甚大な影響を被るかを記載した上申書を作成し提出するなどの方法が考えられます。提出する上申書の内容などについては、顧問弁護士にご相談ください。ただ、どの程度の事情が認められれば確実に辞退が許されるかは、現段階では確実なことは申し上げられません。今後の運用を見守る必要があろうかと思います。



ご不明な点などありましたら、顧問弁護士(法律顧問)にご相談ください。

従業員の方で、法律問題についてお悩みの方も、弁護士にご相談ください。



最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者が不払い残業代を請求するというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、御社の顧問弁護士を検討することをお勧めします。

2009年6月11日木曜日

不払いの残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。

(3)原告E,原告F及び原告G(ルームメイク業務)について
ア 前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば次の各事実が認められる。
(ア)これらの原告らは,平成15年4月26日までは9時から17時までの間,同月27日からは8時から16時までの間の勤務とされており(前提事実(3)ウ),週に1日の休日があった(〈証拠略〉)。
 また,これらの原告らの休憩時間は,就業規則において,〔1〕12時から13時まで及び〔2〕15時から15時20分まで(合計1時間20分)と定められていた(〈証拠略〉)。
(イ)担当業務の内容等
 本件ホテルには,2階ないし5階に9室ずつ,6階に3室,合計39室の客室があり,昼間のルームメイク業務は,2人が1つのペアとなり,2階ないし5階を1つずつのペアが担当し,6階については各ペアが適宜分担していた。
 客室の清掃作業としては,〔1〕毎日朝から,各室のチェックアウトがされた後に行われる「本掃」,〔2〕1か月に1度,各室を徹底的に清掃する「特掃」の他に,〔3〕休憩の利用客が客室を出た後の「メイク」の作業があった。なお,風呂場については,これらの原告らではなく,男性の担当者が作業をしていた。
「本掃」は9時から行われていたが,これらの原告らは,「本掃」が始まる前に,客室用のビールや歯ブラシなどの物品を地下からリネン室に運ぶなどして,清掃作業の準備を行っていた。また,「本掃」の作業は,15時ころまではかかっていた。
 これらの原告らは,「本掃」の作業を行っていないときには,各階にあるリネン室で食器を洗うなどして,「メイク」の作業に入るために待機していた。すなわち,リネン室には,休憩客が客室を出たことを示すランプが設置してあり,そのランプの点灯や,フロントからの電話連絡により,「メイク」の作業に入ることが指示されていた。
 これらの原告らは,1階の食堂で昼食をとっており,フロントの担当者から昼食をとりやすい時間帯について連絡を受けて,昼食をとっていた。これらの原告らは,昼食を約15分間でとっていた。また,原告Gは,メイクリーダーなって以降,まず他のルームメイク担当者が昼食をとれるように心がけた結果,自身の食事の時間の確保が困難となっていた。(以上について,〈証拠略〉,原告F)
イ 前記アで認定したところによれば,これらの原告らは,タイムカードに打刻された出勤時刻から退出時刻までの間業務に従事していたと認められ,また,休憩時間については,〔1〕原告Gについては,メイクリーダーとなって以降は,休憩時間が全く確保されていなかったが,メイクリーダーとなる以前には,15分間の休憩時間が確保されていたと認められ,〔2〕原告E及び原告Fについても,15分間の休憩時間が確保されていたと認められるものの,それ以上に休憩時間が確保されていなかったことが認められる(15分を超える部分については,いわゆる手待時間であると認められる。)
 そうすると,これらの原告らが実際に労働したと認められる時間は,別紙労働時間計算表(認定)5ないし7〈略〉記載の「出社時刻」から「退社時刻」までの間であり,同表の「休憩時間」記載のとおりの休憩がとられていたこととなる。
 また,前記アで認定したところによれば,これらの原告らの所定労働時間は,1日につき6時間40分であったと認められる。
(4)原告H(フロント業務・一般事務・リーダー業務)について
ア 前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
(ア)原告Hは,9時から17時までの勤務とされており(前提事実(3)エ),週に1日の休日があった(〈証拠略〉)。
 原告Hについては,就業規則等において休憩時間が定められていなかった(〈証拠略〉,証人J)。しかし,後記(イ)記載のとおり,原告H自身が勤務報告書や残業報告書の作成をしていたことからすると,原告H自身,12時から13時までのころに1時間の休憩時間が用意されていることを理解していたとみるのが自然である。
(イ)担当業務の内容等
 原告Hは,本件ホテルのフロントにおいて,金銭出納帳や仕入帳の記帳,請求書の処理,勤務報告書や残業報告書の作成,各室の精算機からの集金業務,客室のチェック,支配人が休みの際の支配人代行,他の同種のホテル(ライバル店)の調査などを担当していた(〈証拠略〉,証人J,原告H)。
 原告Hについて,被告は,勤務時間内に1時間分の休憩時間があるものとして扱っていたが,原告Hの休憩時間は,昼食時間が確保されていたにすぎなかった(〈証拠略〉,証人J,原告H)。
イ 前記アで認定したところによれば,原告Hは,タイムカードに打刻された出勤時刻から退出時刻までの間業務に従事しており,休憩時間は昼食時間の15分程度しか確保されていなかったと認めるのが相当である。そうすると,原告Hが実際に労働したと認められる時間は,別紙労働時間計算表(認定)8〈略〉記載の「出社時刻」から「退社時刻」までの間であり,同表の「休憩時間」記載のとおりの休憩がとられていたこととなる。
 また,前記アで認定したところによれば,原告Hの所定労働時間は,1日につき7時間であったと認められる。
企業の方で、残業代請求についてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料やサービス内容が異なりますので、比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉解雇敷金返却・原状回復義務借金の返済刑事事件遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年5月22日金曜日

未払いの残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

第3 判断
1 時間外等の割増賃金(残業代)請求について
(1)原告A,原告B及び原告C(フロント業務)について
ア 前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
(ア)原告A,原告B及び原告Cは,フロント業務を担当しており,3日に1日,13時(以下,時刻については,24時間制で表記する。)から翌日の13時までの勤務となっていた(前提事実(3)ア参照)。
(イ)担当業務の内容等
 本件ホテルのフロントは,対面式のものではなく,利用客は,部屋の使用状況や料金を表示してある料金パネルで,空室の中から利用したい部屋を選ぶことによってチェックインを行うことができ,また,各部屋に備付けられた自動精算機に表示された金額を投入してチェックアウトを行うことができる。このように,利用客は,チェックイン及びチェックアウトのいずれの場合にも,フロントを訪れる必要はなく,フロントの担当者は,通常,直接利用客に対応することはない。フロントの担当者が顧客に直接対応するのは,顧客がクレジットカードを使用する場合や,空席状況を確認したりする場合などに限られる(証人J,原告A)。
 これらの原告らが担当していたフロント業務の主たる内容は,〔1〕本件ホテルの利用客が駐車場に入ってきた時点から部屋に入るまでを,モニターで監視すること(料金パネルで利用客が複数の部屋を押すと,入室しなかった部屋についても利用がされていることとなり,売上げが計上されてしまうシステムになっていたため,そのような事態を防止する必要があった。),〔2〕フロントにかかる内線電話(利用者からの各種のクレームや食事の注文など)及び外線電話への対応,〔3〕駐車場のモニターの監視(本件ホテルの利用客以外の者が駐車場を利用することを防止するとともに,何者かに利用客の自動車のナンバーが撮影されてプライバシーが害されることを防止するため)などであった(〈証拠略〉,原告A)。
(ウ)業務の開始時刻及び終了時刻
 これらの原告らのタイムカードに記載された出勤時刻を総じて見ると,13時よりも20分ないし30分程度早めの時刻となっている日が多い(別紙労働時間計算表1ないし3参照)。
 そして,これらの原告らは,勤務日には13時よりも20分から30分程度前に来るように指示されていた。そして,この20分ないし30分の間を使って,前任者との間での引継ぎ(フロントで保管している現金及び商品の引継ぎ)を行うとともに,前任者が日報作成を行う間のフロント業務(電話対応など)を行っていた(以上について,〈証拠略〉,原告A)。
 なお,業務の終了時刻については,後任者も同様に20分ないし30分程度前に来るように指示されていたことからすると,業務終了前にタイムカードを打刻していたことや,日報を作成するのにコンピューターのデータが円滑に表示されないために時間を要したことがあったこと(原告A)を考慮しても,終業予定時刻(13時)を15分程度を超える業務の延長を要したと認めるに足りる証拠はない。
(エ)休憩
 これらの原告らについては,被告の就業規則においては,次の時間帯(合計6時間40分)が休憩及び仮眠時間と定められていた(〈証拠略〉)。
a 17時から19時まで
b 24時から翌日1時まで
c 3時から6時40分まで
 しかしながら,これらの原告らは,前記(イ)記載の〔1〕ないし〔3〕の業務をこれらの時間帯においても行っており,これらの業務を離れて自由に過ごせる時間が確保されていなかった。食事についても,フロント業務を行っていた席においてとり,食事中にもこれらの業務を担当していた(以上について,〈証拠略〉,証人J,原告A)。
イ 前記アで認定したところによれば,これらの原告らは,12時30分(タイムカードの出勤時刻の打刻がそれよりも遅いときは,タイムカードの打刻時刻とする。)に業務を開始し,13時15分(タイムカードの退出時刻の打刻がそれよりも早いときは,タイムカードの打刻時刻とする。)に業務を終了していたと認めるのが相当である。そして,これらの原告らは,前記ア(エ)記載のとおり定められていた休憩及び仮眠時間においても,業務に従事していたと認められる(いわゆる手待時間であると認められる。)。そうすると,これらの原告らが実際に労働したと認められる時間は,別紙労働時間計算表(認定)1ないし3〈略〉記載の「出社時刻」から「退社時刻」までの間であったこととなる。なお,原告Aが平成14年10月20日に午前8時35分に出勤していることが認められるところ(〈証拠略〉),これは,業務の必要から通常とは異なる時間に出勤することが命じられたことによるものと認めるのが自然であり,同日については原告Aは同時刻から業務を行っていたと認められる。
 他方,証拠(〈証拠略〉)によれば,これらの原告らの各月の所定労働時間は,別紙計算表(認定)1ないし3の「所定労働時間」の欄に記載の時間数を超えないことが認められる。
(2)原告D(フロント業務・一般事務)について
ア 前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
(ア)原告Dは,平成15年5月末日までは17時から翌日の1時までの間,また,同年6月1日からは16時から24時までの間の勤務とされており(前提事実(3)イ参照),週に1日の休日があった(原告D)。
 原告Dについては,就業規則等において休憩時間が定められていなかった(〈証拠略〉,証人J)。
(イ)担当業務の内容等
 原告Dの担当した主たる業務は,利用客が注文した料理を調理することであり,その他には,料理に関する在庫等の帳簿の作成やフロント業務があった(〈証拠略〉,原告D)。
 原告Dについて,被告は,勤務時間内に1時間分の休憩時間があるものとして扱っていた(〈証拠略〉,証人J)。また,利用客からの料理の注文が深夜になってもあり,原告Dは,これに対応して調理を行っていた(原告D)。
イ 前記アで認定したところによれば,原告Dは,タイムカードに打刻された出勤時刻から退出時刻までの間業務に従事しており,休憩時間が全く確保されていなかったと認められる。そうすると,原告Dが実際に労働したと認められる時間は,別紙労働時間計算表(認定)4〈略〉記載の「出社時刻」から「退社時刻」までの間であったこととなる。もっとも,証拠(〈証拠略〉)によれば,原告Dが,原告A,原告B及び原告Cと同様の勤務態勢で勤務していたと認められる日(別紙労働時間計算表(認定)4の「退社時刻」欄に網掛けの表示を行った日である。)については,前記(1)イに記載したのと同様の理由から,業務の終了時刻を37時15分と認めるのが相当である
 また,前記アで認定したところによれば,原告Dの所定労働時間は,1日につき7時間であったと認められる。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談交渉刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年5月4日月曜日

残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

(5)被告の主張について
ア 被告の主張イ(時間外労働(残業)についての事前の承認の必要性)について
 被告は,被告においては,実際に労働実態もないのに時間外手当(残業代)が請求されることを防止するため,事前に所属長の承認を得て就労した場合の就業のみを時間外勤務として認めることとしており、原告ら主張の時間外労働(残業)については所属長の承認がされていない旨主張する。
 なるほど,被告の就業規則には被告主張のような内容の規定が存在するが(前提事実(4)ク),被告が主張するように,この規定は不当な時間外手当(残業代)の支払がされないようにするための工夫を定めたものにすぎず,業務命令に基づいて実際に時間外労働(残業)がされたことが認められる場合であっても事前の承認が行われていないときには時間外手当(残業代)の請求権が失われる旨を意味する規定であるとは解されない。 
 そして,前記(1)ないし(4)において認定したところを総合すると,これら原告らの時間外労働(残業)は被告による業務命令に基づくものと認めるのが相当である。
 そうすると,この被告の主張を認めることはできない。
イ 被告の主張ウ及びエ(職務手当等)について
 被告は,原告ら各自に対して毎月3万円の職務手当を支払っており,職務手当は時間外労働(残業)及び深夜労働(残業)の対価としての性格を有するから,その割増賃金(残業代)額が月額3万円を超えない限り,改めて被告が割増賃金(残業代)の支払義務を負うことはないことや,本件ホテルにおいては,被告の給与規定はフロント内書棚等に備え置かれており周知されていたことを主張する。
 なるほど,被告の給与規定には前提事実(4)エ記載のような定めがある。
 しかし,〔1〕原告らの業務内容や勤務時間がそれぞれ異なるにもかかわらず,被告は,原告に対して一律に毎月3万円の職務手当を支給していること,〔2〕被告においては,従来から,時間外手当(残業代)の金額が職務手当の金額の範囲内に止まる場合であっても,時間外手当(残業代)が支給されてきており,前記の被告の給与規定の定め(前提事実(4)エ)の趣旨どおりに運用されていなかったこと(〈証拠略〉,弁論の全趣旨),〔3〕この被告の給与規定の定め(前提事実(4)エ)の趣旨が本件ホテルにおいて周知されていなかったこと(証人J)からすると,職務手当が時間外労働(残業)及び深夜労働(残業)の対価としての性格を有すると認めることはできない。
 そうすると,この被告の主張を認めることはできない。そして,この職務手当も,通常の労働時間又は労働日の賃金(労働基準法37条1項)として,割増賃金(残業代)の基礎となる賃金に含めるべきである。
 なお,被告は,皆勤手当は,無欠勤にて1か月就業した場合に支給されるものであるから(前提事実(4)オ参照),割増賃金(残業代)の基礎となる額に含めるべきではない旨主張する。しかし,皆勤手当も通常の労働時間又は労働日の賃金であるから,割増賃金(残業代)の基礎となる賃金に含められるべきであると解される。
(6)以上によれば,原告らの割増賃金(残業代)額は,別紙計算表(認定)1ないし8及び別紙労働時間計算表(認定)1ないし8のとおり計算されることになり,その金額は,次のとおりである。
ア 原告A 220万5147円
イ 原告B 241万8078円
ウ 原告C 251万5919円
エ 原告D 256万3186円
 原告Dが被告から時間外手当(残業代)として1万5172円を受領したことについては争いがないので,未払の割増賃金(残業代)の額は254万8014円となる。
オ 原告E 90万4378円
 原告Eが被告から時間外手当(残業代)として1192円を受領したことについては争いがないので,未払の割増賃金(残業代)の額は90万3186円となる。
カ 原告F 115万1297円
 原告Fが被告から時間外手当(残業代)として4770円を受領したことについては争いがないので,未払の割増賃金(残業代)の額は114万6527円となる。
キ 原告G 122万7352円
 原告Gが被告から時間外手当(残業代)として2万2657円を受領したことについては争いがないので,未払の割増賃金(残業代)の額は120万4695円となる。
ク 原告H 113万8534円
 原告Hが被告から時間外手当(残業代)として11万1145円を受領したことについては争いがないので,未払の割増賃金(残業代)の額は102万7389円となる。
2 付加金の請求について
 原告らはいずれも未払の割増賃金(残業代)の半額に相当する額の付加金を請求していることから,前記1(6)記載の各原告らの割増賃金(残業代)についての認容額の半額を付加金として認めるのが相当である。
 そうすると,原告らに認めるべき付加金の額は,次のとおりとなる。
ア 原告A 110万2574円
イ 原告B 120万9039円
ウ 原告C 125万7960円
エ 原告D 127万4007円
オ 原告E 45万1593円
カ 原告F 57万3264円
キ 原告G 60万2348円
ク 原告H 51万3695円
3 原告Hの不法行為に基づく損害賠償請求について
(1)証拠(〈証拠略〉,証人J,証人I,原告H,原告A,原告F,原告D)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 原告Hは,平成15年12月ころ,パートタイマーでないと今後は雇用を継続しないと被告から言われていたために,いろいろと悩んだ末,平成16年3月15日で退職する予定であった。
イ 原告らは,平成16年2月27日ころ,被告に対して割増賃金(残業代)を請求する趣旨の通知書を送付した。
ウ 平成16年3月11日,被告のマネージャーであったIが,本件ホテルを訪れ,フロント内にいた原告Hに対して,「えらいことやってくれたな。」,「会社をやめてからするもんやろう。」,「会社に世話になったんやろう。」,「こんなやつよう雇ったなあ。」,「まだおんのか。」,「この百姓が。」と,きつい口調で罵った。
 また,その際,Iは,同フロントの付近で,本件ホテルの支配人であるJ(以下「J」という。)に対して,「あんなやつら,早く辞めてもらったらどうや。あんたの采配で2日分ぐらいの給料は何とかなるやろう。給料全部出してやって,あしたから来てもらうな。」と述べた。その言葉は,原告Hに十分に聞こえた。
 この言葉を聞いて,原告Hは,Jに翌日から出勤しない旨を告げて,翌日以降は出勤しなくなった。
(2)前記(1)で認定したところによれば,原告Hが前記(1)ウ記載のIの行為によって精神的苦痛を受けたこと,また,このIの行為が被告の事業の執行について行われたことが認められる。
 そして,原告Hが既に被告を近いうちに退職することを決めていたことなど,本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると,このIの行為に対する慰謝料としては,10万円の金員の支払を命じるのが相当であると認められる。
企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士の費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉解雇刑事事件借金の返済敷金返却や原状回復(事務所、オフィス、店舗)遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年4月12日日曜日

残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。

イ 時間外労働(残業)についての事前の承認
 被告においては,実際に労働実態もないのに,単に退社時刻やタイムカードの打刻時刻のみから時間外手当(残業代)が請求されることを防止するため,事前に所属長の承認を得て就労した場合の就業のみを時間外勤務として認めることとしている(前提事実(4)ク参照)。

 原告らが時間外手当(残業代)を請求できるのは,事前に所属長が承認した部分に限られるべきである。
ウ 職務手当
 被告は,原告ら各自に対して,毎月3万円の職務手当を支払っていた。被告においては,前提事実(4)エ記載のとおり,給与規定において,基本給とは明確に区分した形で職務手当を支給される旨や,「職務手当の支給を受ける者には,特に指定した場合を除き,時間外及び深夜勤務手当は支給しない。ただし,時間外及び深夜勤務手当額が職務手当額を超える場合には,別途超過額を職務手当の追加分として支給する。」旨が定められており,職務手当が時間外労働(残業)及び深夜労働(残業)の対価としての性格を有することは明らかである。
 したがって,仮に何らかの時間外労働(残業)や深夜労働(残業)が生じていたとしても,その割増賃金(残業代)額が月額3万円を超えない限り,改めて被告が割増賃金(残業代)の支払義務を負うことはない。
 なお,本件ホテルにおいては,被告の給与規定は,少なくとも平成14年以降は,就業規則とともに,フロント内書棚等に備え置かれており,周知されていた。
エ 割増賃金(残業代)の算定の基礎となる額
 前記ウ記載の職務手当の性質からすると,職務手当を割増賃金(残業代)算定の基礎となる額に含めるべきではない。
 また,皆勤手当は,無欠勤にて1か月就業した場合に支給されるものであるから(前提事実(4)オ参照),通常の労働時間又は労働日の賃金とは言えず,割増賃金(残業代)算定の基礎となる額に含めるべきではない。
(2)原告Hの不法行為に基づく損害賠償請求について
 平成16年3月11日に,Iが,他2名とともに,毎月実施される各店の巡回のために,本件ホテルを訪れたことはあったが,原告H主張のような発言をした事実はない。

なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉オフィスや店舗の敷金返却請求(原状回復義務)多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年3月21日土曜日

残業代請求

今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。

3 被告の主張
(1)時間外等の割増賃金(残業代)請求について
ア 原告らの業務内容,休憩等について
(ア)原告A,原告B及び原告C(フロント業務)
a 本件ホテルのフロントは,対面式のものではない。顧客は,部屋の使用状況や料金を表示してある料金パネルで,空室の中から利用したい部屋を選ぶことによってチェックインを行うことができ,また,各部屋に備付けられた自動精算機に表示された金額を投入してチェックアウトを行うことができる。このように,顧客は,チェックイン及びチェックアウトのいずれの場合にも,フロントを訪れる必要はなく,フロントは,通常,直接に顧客対応をすることはない。フロントが顧客に直接対応するのは,顧客がクレジットカードを使用する場合や,空席状況を確認したりする場合などに限られる。
 本件ホテルのフロント業務の主たるものは,フロントに備え付けてある電話の対応(外部からの電話やチェックインした顧客からの電話への対応)をすることである。顧客からの電話の内容の大半は,食事の注文か,設備に不備のあった場合である。午前2時から午前6時までの深夜は,このような電話はほとんどなく,実質的にはフロント業務はほとんどないと言える。
 なお,フロント業務としては,13時(午後1時)の交替時に,現金や業務の引継ぎ,顧客の入退出の記録などのルーティーンワークも挙げられる。
 以上のように,本件ホテルのフロント業務は通常1人で担当が可能であり,原告A,原告B及び原告Cの3人が3日に1日の順で担当していた。また,フロント業務は24時間に及ぶため,休憩時間の交代要員として原告Dと原告Hが配置されていた。
b 原告A,原告B及び原告Cの労働時間は,3日に1日,13時(午後1時)から翌日の13時までとなっていた(1か月単位の変形労働時間制)。
 また,被告においては,次の合計6時間40分が休憩及び仮眠時間とされており,これらの時間帯は自由に過ごして良い時間として実質的に確保されていたのであり,これらの原告らは十分に休憩等をとっていた。
(a)17時から19時まで
(b)24時から翌日1時まで
(c)3時から6時40分まで
 さらには,これらの原告らの担当業務の内容を見ても,特に所定労働時間を超えて従業する必要はなく,タイムカードの打刻時刻をもって労働時間を認めることは相当でない。

(イ)原告D(フロント業務・一般事務)
a フロント業務の内容は,前記(ア)a記載のとおりである。
 一般事務とは,帳簿類の記帳や,月末の備品類の在庫の確認・注文などである。また,原告Dは,時間が空いている場合には,ルームメイクを手伝ったり,料理等を行うこともあった。
 原告Dは,フロント業務担当の原告A,原告B及び原告Cが休憩・仮眠をとりやすくするための交代要員として雇用された。
b 原告Dについても,休憩時間が1時間確保されており,十分に休憩がとれていた。
 また,原告Dの担当業務の内容を見ても,特に所定労働時間を超えて従業する必要はなく,タイムカードの打刻時刻をもって労働時間を認めることは相当でない。
c 被告は,原告Dに対して,職務手当(後記ウ参照)とは別に,次のとおり,時間外手当(残業代)を支払った。
平成15年1月 1万1379円 (9時間分)
同年8月 3793円 (3時間分)
(ウ)原告E,原告F及び原告G(ルームメイク業務)
a ルームメイク業務とは,顧客が部屋を去った後の清掃業務で,ベッドメイク,備品の補充,部屋の清掃,トイレ・洗面所の清掃などを行う業務である。
 被告は,ルームメイク業務の担当者に対して,清掃状況を見ながら各自の判断で適宜休憩を取るように指示しており,また,従業員休憩室を設け,テレビを設置するなどして,従業員が休憩しやすい環境を整備している。
 なお,原告Gは,メイクリーダーとなって以降は,他のルームメイク担当者が清掃した部屋の点検業務,備品の注文,ルームメイク担当者のシフト調整を担当するようになり,実際のルームメイク業務を担当してはいない。
b 原告E,原告F及び原告Gについては,〔1〕正午から13時(午後1時)まで,及び〔2〕15時(午後3時)から15時20分までの間が休憩時間とされており(合計1時間20分),十分に休憩がとれていた。
 また,これらの原告らの担当業務の内容を見ても,特に所定労働時間を超えて従業する必要はなく,タイムカードの打刻時刻をもって労働時間を認めることは相当でない。
c 被告は,これらの原告らに対して,職務手当(後記ウ参照)とは別に,次のとおり,時間外手当(残業代)を支払った。
(a)原告E
平成15年3月 4770円 (4時間分)
同年11月 1192円 (1時間分)
(b)原告F
平成15年3月 5962円 (5時間分)
同年4月 4770円 (4時間分)
(c)原告G
平成15年3月 1万0732円 (9時間分)
同年4月 2万0273円 (17時間分)
同年5月 1192円 (1時間分)
同年9月 1192円 (1時間分)
(エ)原告H(フロント業務・一般事務・リーダー業務)
a フロント業務及び一般業務の内容は,前記(ア)a又は(イ)a記載のとおりである。なお,原告Hは,リーダーの肩書きを有していたが,支配人代行のような業務を行っていたわけではない。
b 原告Hについては,正午から13時(午後1時)までの間が休憩時間とされており,その業務内容から,直接顧客に接する機会は少なく,自分のペースで労働することが可能であり,十分に休憩がとれていた。
 また,原告Hの担当業務の内容を見ても,特に所定労働時間を超えて従業する必要はなく,タイムカードの打刻時刻をもって労働時間を認めることは相当でない。
c 被告は,原告Hに対して,職務手当(後記ウ参照)とは別に,次のとおり,時間外手当(残業代)を支払った。
平成15年2月 2385円 (2時間分)
同年3月 3万1005円 (26時間分)
同年4月 3万2794円 (27.5時間分)
同年5月 2万1465円 (18時間分)
同年6月 1万0441円 (8.5時間分)
同年7月 1万2284円 (10時間分)
同年8月 1万1670円 (9.5時間分)
同年9月 6124円 (5時間分)
同年10月 4913円 (4時間分)
同年11月 9051円 (7時間分)
(合計 14万2150円)
企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士の費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉解雇刑事事件借金の返済敷金返却や原状回復(事務所、オフィス、店舗)遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年2月11日水曜日

サービス残業(残業代請求)

今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。

2 原告の主張
(1)時間外等の割増賃金(残業代)請求
ア 労働時間
(ア)原告らは,別紙労働時間計算表1ないし8に記載の出社時刻と退社時刻の間,業務に従事していた(これらの別紙においては,例えば,「37:12」はその翌日の午後1時12分を示すものである。)。
 なお,この出社時刻と退社時刻とはタイムカードに打刻された時刻であるが(前提事実(5)参照),原告らは,被告から,始業については,正規の始業時刻の20分ないし30分前に出勤して業務を開始するように指示されていたし,終業についても,タイムレコーダーを打刻してから残りの作業をするように指示されていた。
(イ)原告らの勤務時間中には休憩時間(深夜勤務の場合には仮眠時間)が予定されてはいたが,原告らは,業務のために,休憩や仮眠を取ることができなかった。
イ 給与額等
 原告らの各月の月平均所定労働時間数や,時間外労働(残業)時間等は,別紙計算表1ないし8に記載のとおりであった。
ウ 割増賃金(残業代)額
 前記ア及びイによれば,平成14年3月分から平成16年3月分までの原告らの割増賃金(残業代)の総額は,別紙計算表1ないし8の末尾に記載の金額となる。
エ 既払分(後記の被告の主張(1)ア参照)
(ア)原告Dは,被告から,時間外手当(残業代)として1万5172円を受領した。
(イ)原告Eは,被告から,時間外手当(残業代)として1192円を受領した。
(ウ)原告Fは,被告から,時間外手当(残業代)として4770円を受領した。
(エ)原告Gは,被告から,時間外手当(残業代)として2万2657円を受領した。
(オ)原告Hは,被告から,時間外手当(残業代)として11万1145円を受領した。
 なお,これらは,後記の被告の主張(1)ア記載の弁済のうち,原告らが時間外賃金の請求をしていない平成15年3月分以外の部分については,弁済の事実を認める趣旨である。
オ 請求の内容
 原告らは,請求の趣旨1ないし8の各(1)のとおり,別紙計算表1ないし8の末尾に記載の金額(ただし,原告D,原告E,原告F,原告G及び原告Hについては,この金額から前記エ記載の既払分を控除した金額)及びこれに対する平成16年4月1日(原告らが退職した後であり,かつ,同年3月分の給与の弁済期である同月31日の翌日)から支払済みまで年14.6パーセント(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項,同法施行令1条)の割合による金員の支払を求める。
(2)付加金の請求
 原告らは,請求の趣旨1ないし8の各(2)のとおり,原告ら主張の割増賃金(残業代)の請求額(請求の趣旨1ないし8の各(1)記載の金額)の半額(1円未満は四捨五入)に当たる付加金(労働基準法114条)及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。
(3)原告Hについて,不法行為に基づく損害賠償請求
 平成16年3月11日,Iマネージャー(以下「I」という。)は,原告Hに対して,原告らが労働基準監督署などに相談したことについて、「面白いことをしてくれたね,まだおるんか,いつ辞めるねん,こんな奴よう雇ったなあ,この百姓が。」などと罵詈雑言を浴びせ,「明日からは来なくていい」と言って,翌日から出勤できないようにした。
 これは,被告の事業を遂行するためにIが行ったものであり,被告は使用者としてIの不法行為について責任を負うべきである。 
 したがって,原告Hは,請求の趣旨8(3)のとおり,その受けた精神的苦痛に対する慰謝料として,100万円及びこれに対する不法行為の日(平成16年3月11日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉オフィスや店舗の敷金返却請求(原状回復義務)多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年1月21日水曜日

残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

第2 事案の概要
 本件は,被告の従業員であった原告らが,割増賃金(残業代)の支払(いずれの原告についても,平成14年3月支給分から平成16年3月支給分までのもの)を求めた事案である。
1 前提事実(証拠を掲記した事実を除くほかは,当事者間に争いがないか,争うことが明らかにされていない事実である。)
(1)被告
 被告は,ファッションホテル(ラブホテル)である「ユーズT」(以下「本件ホテル」という。)を経営する株式会社である。
 本件ホテルには,客室が39室ある(〈証拠略〉)。
(2)原告ら
 原告らは,いずれも被告の従業員であり,本件ホテルにおいて業務に従事していた者である。
 各原告の担当していた業務内容,入社時期,退職時期は,次のとおりである。
ア 原告A フロント業務担当
平成11年4月9日入社 平成16年3月15日退職
イ 原告B フロント業務担当
平成11年4月12日入社 平成16年3月15日退職
ウ 原告C フロント業務担当
平成13年6月26日入社 平成16年3月15日退職
エ 原告D フロント業務・一般事務担当
平成13年6月25日入社 平成16年3月15日退職
オ 原告E ルームメイク業務担当
平成8年11月16日入社 平成16年3月15日退職
カ 原告F ルームメイク業務担当
平成6年8月7日入社 平成16年3月15日退職
キ 原告G ルームメイク業務担当(なお,原告Gは,平成15年9月16日以降,メイクリーダーであった。)
平成13年11月26日入社 平成16年3月15日退職
ク 原告H フロント業務・一般事務・リーダー業務担当(なお,原告Hがリーダーとなったのは,平成15年5月16日以降である。)
平成11年12月13日入社 平成16年3月15日退職
(3)原告らの勤務態勢
 原告らの勤務態勢は,次のとおりであった。
ア 原告A,原告B及び原告C(フロント業務)
 3日に1日,13時(午後1時)から翌日の13時(午後1時)までの勤務となっていた。
イ 原告D(フロント業務・一般事務)
(ア)平成15年5月まで
17時(午後5時)から翌日の1時(午前1時)まで
(イ)平成15年6月から
16時(午後4時)から24時(午後12時)まで
ウ 原告E,原告F及び原告G(ルームメイク業務)
(ア)平成15年4月26日まで
9時(午前9時)から17時(午後5時)まで
(イ)平成15年4月27日まで
8時(午前8時)から16時(午後4時)まで
(以上について,〈証拠略〉,原告F,弁論の全趣旨)
エ 原告H(フロント業務・一般事務・リーダー業務)
9時(午前9時)から17時(午後5時)まで
(4)被告の給与規定の内容
 被告の給与規定(平成13年4月1日から実施されたもの)や就業規則(同日から実施され,平成14年3月30日に改定されたもの)には,次の旨の定めがある(〈証拠略〉)

ア 時間外勤務手当(残業代)(給与規定16条)
 時間外勤務手当(残業代)は,正規の就業時間を超えて勤務することを命じられ,その勤務に服した一般職に支給する。
 時間外勤務手当(残業代)の額は,その勤務時間につき,勤務1時間当たりの算定基礎額に100分の125を乗じた額とする。
イ 休日勤務手当(給与規定17条)
 休日勤務手当は,休日に勤務することを命じられ,その勤務に服した従業員に支給する。ただし,振替休日を与えられた場合は,当該休日勤務は,通常の勤務日に勤務したものとみなし,休日勤務手当は支給しない。
 休日勤務手当の額は,勤務1時間当たりの算定基礎額に対して,法定休日については100分の135,その他の休日については100分の125を乗じた額とする。
ウ 深夜勤務手当(残業代)(給与規定18条)
 深夜勤務手当(残業代)の額は,午後10時から午前5時までの間に勤務した従業員に支給する。深夜勤務手当(残業代)の額は,その勤務時間につき,勤務1時間当たりの算定基礎額に100分の25を乗じた額とする。
エ 職務手当(給与規定20条)
 職務手当は,一般職に従事する従業員に支給する。
 職務手当の額は,時間外及び深夜勤務等の特殊性を考慮して別に定める。
 職務手当の支給を受ける者には,特に指定した場合を除き,時間外及び深夜勤務手当(残業代)は支給しない。ただし,時間外及び深夜勤務手当(残業代)額が職務手当額を超える場合には,別途超過額を職務手当の追加分として支給する。
オ 皆勤手当(給与規定21条)
 皆勤手当は,無欠勤にて1か月就業した場合に支給する。
カ 計算期間など(給与規定7条)
 従業員に毎月支払う給与は,前月16日から当月15日までを計算期間として当月の末日に支払う。ただし,支給日が休日に当たるときは,その前営業日に繰り上げて支給する。
 時間外手当(残業代),休日勤務手当及び労働基準法11条並びに91条に規定する賃金の減額については,前月16日から当月15日までを一給与計算期間とし,当月15日をもって締め切る。
キ 変形労働時間制(就業規則12条)
 業務の都合により,1か月単位の変形労働時間制による勤務を実施することがある。(なお,平成14年3月30日改定前の就業規則においては,「業務の都合により,変形労働時間制による勤務を実施することがある。」と定められていた。〈証拠略〉,原告A)

ク 時間外勤務(就業規則15条2項)
 従業員が時間外勤務を行う場合には,原則として所属長に事前の承認を得なければならない。
(5)原告らのタイムカード
 原告らが打刻していたタイムカードにおける出勤時刻及び退出時刻は,別紙労働時間計算表1ないし8〈略〉の「出社時刻」及び「退社時刻」欄記載の時刻のとおりである。
(6)原告らの各月の給与額(基本給や各種手当の額)は,別紙計算表1ないし8〈略〉に記載のとおりであった。
企業の方で、残業代請求についてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料やサービス内容が異なりますので、比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉解雇敷金返却・原状回復義務借金の返済刑事事件遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年1月2日金曜日

法律顧問・顧問弁護士の扱うテーマ:残業代

このブログでは、企業の顧問弁護士をしている者の立場から、日々接している法律問題のうち、一般的な情報として役に立ちそうなものをメモしています。ジャンルは幅広く扱っていますが、近時、未払いの残業代の問題などの労務問題が増えているので、そのような傾向を反映した形でのテーマのバラつきはあるかもしれません。

今日のテーマは残業代の請求です。

会社が残業代を払わない場合、その会社に対しては付加金という非常に大きなペナルティが科せられます。


付加金は、裁判所を使って未払い残業代の請求をするときに、未払いの額と同じだけの額を追加して請求できるというものです。つまり、請求額が2倍になるということです。

しかも、付加金には、それが認められた日(=判決が確定した日)から年利5%の遅延損害金(支払いの遅れたことにより余分にもらえるお金)が加算されます。


そうすると、会社側としても、未払い残業代だけではなく、付加金まで支払わされるのを避けるため、裁判は避けたいと考えるのが自然でしょう。ですから、裁判をする前に、会社が任意で未払い残業代を支払うことを高い確率で期待できるのです。



さらにすごいことに、未払い残業代というのは、不払いのときから、年利率6%の遅延損害金を請求することができるのです。この低金利の時代において、6%の利率は非常に高いといえます。さらに、その従業員が会社を退職した以降は、年利14.6パーセントの遅延損害金を請求できます(賃金の支払の確保等に関する法律第6条)。


これら全てを合計すると、請求額が、そもそもの未払い残業代の何倍にもなることがあります。

ただ、残業代は過去2年までしかさかのぼって請求できません。お早めに弁護士に相談することをお勧めします。また、企業側の方で、残業代について不安な点などがあれば、顧問弁護士に相談すると良いと思います。なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。